平成20年3月17日(月)
春の彼岸法要
もう一雨くれば…春… 
 
 もう、すぐ近く…に来ているような昨日今日のやさしい風。桜の開花日も予想されている。どうやら今年は静岡県がいちばんらしい。
 彼岸の入りはウイークデーの月曜日。それでも朝から墓参に訪れる檀信徒さんの姿は引きも切らない。ご先祖様の喜ぶ笑顔が目に浮かぶ。ただ、墓地だけでなく、お位牌堂に詣でて頂くのが望ましい。さらに、午後からの彼岸会に参ずれば方丈さまはじめ和尚さまに従い読経供養も可能、且つ個々に香炉が回されるのでご先祖様へのご挨拶も出来る。
 
 やがて鉦が響き ♪草のいおりに♪とご詠歌が本道に流れる。大きな鐘が鳴り法要が始まる頃には位牌堂から戻った人も座り始めた。しかし、見慣れない長い和紙の書き物が懐かしい衣桁に掛けられ「何か」が準備されている。
和尚様方が控える中、方丈さまが入堂される。香を炊き三拝、檀信徒も続く。お密湯などをささげる「献湯菓茶」を終え三拝する。厳粛に流れる諸事に気持ちが洗われる。やがて、堂宇いっぱいに般若心経を唱え回向文を読誦、再び一同三拝にておつとめが終わる。
 続いて彼岸法要に移り、檀信徒も併せて修証義第4章を唱え、ご先祖の安らかならんことを心から念じた。お経の流れる中、回し香炉が全員をめぐり、それぞれに祈った。香炉が戻りふたたびご詠歌が流れる中、方丈様が退堂、続いて和尚様方も静かにならった。
急いで着替えられた方丈さま直々に里みちこさんの「詩語り」の紹介に移る。伺ううちに衣桁にかけられた、5メートル余りの和紙の謎?が解き明かされる。さっそく昨年に引き続き、里さんの静かだが良く透る声が堂内に響く。
詩人であり、「詩語りびと」として全国各地にて講演・展覧会を開催、人の命の大切さを訴え、人々に元気を植えつけている。今日も個展の間をぬって奧出雲(島根県)から駆けつけられた。先日はNHKにも採り上げられているユニークな詩人である。45歳で大学に入学。在学中から毎朝大阪城公園にて「詩語り」を続け、13年目という活動派。言葉は明快、はきはきと歯切れもいい。
お話のテーマは、「亡き父への手紙」。
ご自身の体験を詩でつづり、皆さんに語りかける。言葉一つ一つに思いがこもる。真情あふれる言葉選びとウイットに包まれ、リズミカルな表現は聞く人の心に躍りこんでくる。深くうなずく人、笑みは浮かべているが目は潤んでいる人、それぞれに引き込まれていった。やさしくモノを観、捕え、語る、人間味あふれる感覚が澄んだ声によって語られていく。
「片方の耳が聴こえなくてももう一つありますから…」と自己の障害もにっこり克服。聴かれた方のほとんどは「もっと聴きたい」「詩集は?」と里さんを取り囲み、問い、求め、慕っていた。
 帰路、背伸びしてつぼみをを覗いたら「もうすぐよ!」と答えてくれた。本堂向かって右のやさしい桜の木のことです。