平成25年4月11日(木)
開山忌
東伊場の見海院さまがご導師、 ご開山521回忌法要を営む 

 例年にない早い開花に本堂前の桜はすっかり緑色、葉ばかりになってしまった。季節の先取りかと思いきや昨日今日と朝夕の冷え込みが厳しく、こちらは遅い花冷えか?と指先をもみつつ本堂を目指す。
 開山忌の配役が替って4年目を迎えるこの日、ご導師は東伊場の潮音山見海院のご住職、清水芳俊老師。ご開山傑堂義俊禅師さまの521回目の遠忌と併せて当山22世透綱密玄大和尚さま183回忌の法要を導かれた。

 11時の打ち出し前には各ご寺院さま、総代さま方がそれぞれ座を占められる。鉦の音が前触れとなって、送迎、方丈、導師、侍者らの順で入堂、天林寺方丈は須弥壇の右手、東の間に端座される。内陣に進まれた導師は線香を持って一礼香を焼き一礼、続いて五体投地のご挨拶をし、ご開山にささげる献湯菓茶までの所作を粛々と進めていく。   
 開山忌とは、当寺を開き多くの法弟を育てられた、ご開山傑堂義俊禅師への感謝を込め、法縁につながる者によるご命日の法要である。毎年4月11日に営まれるが、数年前より当寺につながる寺院さまに導師をお勤めいただき、法縁の永遠に続く様式が催されるのである。ご開山を偲び、通じて道元禅師さまお釈迦さまに結びつく、正に「仏縁」の法要とも言えよう。 
 521回、183回忌と口にするのは容易いが、脈々と回忌を重ね続けることは簡単ではない。所作の一つ一つが歴史を乗り越え伝えられて今日に至っているが、会するひと皆がご開山につながる者であり、ご開山への思慕と自己存在の感謝の気持ちがお勤めの真心となっているのであろう。無駄のない動きの中に真摯な姿を垣間見ることができる。沈黙の中での流れるような動きは舞のように美しい。見る人も緊張に包まれ体に力が入り、気疲れるがなぜかその後、心は落ち着き満たされた思いに浸れる…。なぜだろうか?
 法要は導師はじめ各和尚さま方の焼香、読経、檀家総代さま焼香、と順に進み回向文が唱えられ集う一同が三拝、とすべてが成され導師は軽く一礼、退堂された。
 ご開山、けつどうぎしゅん(けつどうぎしゅん堂)大和尚さまは、応永31年(1424年)紀州の熊野で誕生された。当地へのご縁は普済寺を開かれたけぞうぎどん(けぞうぎどんで)大和尚さまに師事されたことに始まる。
 文安2年(1445年)当山の基となる亀鶴山万蔵院を、現在地より少し南方に開創された。年表を繰ってみると、都では権力争いが頻繁に起こり、遠江の国でも一揆や争いが続く不穏な時代であった。
 その後、ご開山様は民に法を説き、弟子を育み、本寺普済寺に3度も住持する一方、渥美半島先端にも布教の足を延ばし、常光寺など数か寺を開かれた。やがて、田原市和地にて穴にこもり鉦を打ちつつ示寂(逝去)された、と伝わっている。
 520年前のことである。