令和3年1月11日(月)
大般若会・新年拝賀式
 新型コロナウイルスに翻弄される中で、令和三年の正月を迎えた。
 近在の和尚さま方が三々五々当山されてこられる。車を降り左手にカバンを持ち、まず本堂に向かって右手を立て、一礼されて玄関に向かう。表敬の姿勢が自然体となっている。控室では正月ゆえに丁重で格式張ったあいさつとなる。
 定刻十一時、殿鍾が打たれると呼応して鉦の音が届き導師の入堂が知らされる。すでに本堂には正装された各寺院さま方と総代さまが控えられている。やがてお付きの僧を従え導師が入堂、冷気とは違う空気が張り詰める。
 導師はご本尊様に線香を持ち一礼、続いて仏前にて香を焚いて一礼する。
 鉦の音に従い、導師はじめ僧侶の皆が五体投地の礼拝を三遍くりかえす。総代様もならい、その場で掌を合わせ三拝する。案内があり、新年ならではの「散華(さんげ)」…道場を清める行い…が丁寧になされる。
 次にご本尊様に「献湯菓茶」がなされ、経題が読まれる。早い調子での読経。やがて導師の振鈴で、六百巻、約五百万字に及ぶという仏典中最大のお経…『大般若波羅蜜多経』の転読に移り、陀羅尼を唱えながら次々と経本が読み込まれる。すべて読み終えた後は、ねんごろな読経へと移る。
 あらためて正面に目を凝らせば須弥壇に、般若札の山二つ。檀信徒家の平安、無事を祈祷し札に籠め、各戸に配られるのである。
 ちなみに『大般若波羅蜜多経』は僧・玄奘がインドから持ち帰り、七年の歳月を費やして翻訳したという経文で、日本では国家安寧・家内安全はもとより自然災害を鎮める力があるとされる。

 次に新たに献茶湯がなされ、「新年拝賀式」へ移る。ご開山・傑堂義俊禅師さまへのご挨拶である。参同契、宝鏡三昧の経が唱えられ、方丈をはじめ連なる僧たちは矜持を正し、焼香された。つづいて檀信徒の皆様を代表して総代さまも焼香された。
 つつがなく法要を終え、方丈より新年の賀詞に加えてコロナ禍の状況を踏まえつつも、健康に留意し前向きにお勤めされたい旨の言葉があり、関係寺院の僧侶はそれぞれの帰路につかれた。