令和5年3月18日(土)
寒い雨の中、静かな彼岸の入り
春の彼岸法要
 免疫を持つ人が増えたのかコロナ禍も新しい展開、でマスクの着用も各人の判断に任せるとの見解が示された。アフターコロナ?の始まりと理解したい。
 我がふるさとは駆け足で近づいてくる春の兆しの中にあるが、昨日からの寒波の襲来で県下の気温は前日より10℃低いとのこと。花冷えに加えて雨、の日曜日。そのセイではないだろうが、檀信徒の墓参も鈍りがち。
 
 ひとの集まりや催事が少しずつコロナ以前に戻りつつあるが…さて、と本堂を覗く。予定の30分ほど前であるが、すでに内陣の脇間には十数人の檀信徒さんが、ストーブを囲んでお待ちになっている。最近の傾向として須弥壇に向かって左…西側の脇間から席が埋まっていく。なぜ…?理由は簡単、本堂用の子椅子が窓際に積まれ、持ち出しやすいからである。
 高齢化に伴うように足腰の故障に悩まれる方が増えている、ように伺える。少しでも楽な姿勢で参加願いたいとの気持ちは当山の希望でもあり、篤志家のご寄付を含め100席ほどの椅子が備わっている。以前から長いお経、正座は苦手…と避けたい人もいるようだが、我慢しながらお経を聴くのはご本尊様もお望みではない。どうぞ、苦痛のない姿勢で法事に参加されますよう、老婆心ながら子椅子の活用をお勧めいたします。

祖師様、ご開山、ご先祖様がたにご挨拶

 僧侶たちが並列して待つ中、定刻1時半、本堂の鐘が鳴らされる。呼応して遠方から引磐(いんきん)が響く。呼応する鐘と鉦。繰り返しの間隔が縮まり音も大きくなると、送迎の僧を先頭に導師が入堂される。続くは侍者(じしゃ)、侍香(じこう)の僧たち。導師は鮮やかな緋の衣。速やかに須弥壇に向かい焼香される。 
 次に五体投地の三礼、導師にならって和尚さま方、そして案内に従い参会者らもその場で三拝する。今まで静かな堂内に、衣の絹ずれ足袋のすり音のみが響く…。
 導師は釈迦牟尼仏、高祖、太祖、ご開山さま方に献湯菓茶を呈し、読経に移り般若心経を唱和する。

彼岸法要に移り、個々人にて焼香
 ご案内の言葉に従い導師はじめ僧侶、参会者一同が三拝。経題が告げられ修証義が唱えられる。ゆっくりで丁寧な読み上げは檀信徒もついて行きやすい。雨に消されて騒音も届かず、堂内の経を全身に浴びながら、聞き覚えの字句に呼応、あわてて唱える人もいる。ほかには、目で和尚さま方の動きを追う人。じっと目を閉じ聴き入る人。時々経の文言にうなずく人。中には首をたれ全身?で聴く人もいる…それぞれのご供養である。
 読経が続く中、和尚様の手によって回し香炉が檀信徒一人ひとりに廻され、本堂を一巡りする。個々にご先祖様をしのび、感謝と家内の安全を祈念し、今後の精進を誓って香を焚かれた、と思われる。
 堂内は香に包まれ、ほどなく彼岸会法要は無事終了した。

 外に出ると、相変わらず雨脚は衰えず、時折吹く風にあおられてもいた。先日聞き覚えた彼岸西風(ひがんにし)(涅槃西風ともいう…春の季語)だな、と得心した。