令和5年9月20日(水)
秋の彼岸法要
残暑の中、曇天の下に詣でる。

 例年に比べ残暑は厳しいが、幸い本日は曇天。風もなく、静かだが少し歩くと汗ばむ。暑さ寒さも彼岸まで…の常とう句は出てこない。相変わらず天気予報も予断は許さず…ご注意を!と異常気象を告げている。思わず、暑さ暑さの彼岸かな…と皮肉りたくなる今年の「お彼岸」である。

 目いっぱいに開け放された本堂に扇風機の実がうなっている。我慢できない暑さではなく、檀信徒さま方は静かに開式を待っておられる。また昨今ささやかれる、コロナやインフルエンザのうわさで皆さまも自主的にマスク着用、座る席も間隔を置いている。

 近在の和尚様方が入堂され須弥壇を挟んで東西に並列、本堂内に緊張が走る、開式まぢかである。
 やがて、殿鐘(本堂南西)が響きわたりきびきびした足取りで侍僧を従え、導師が入堂される。まずはゆったりした足運びながら、確かな動作で本尊さまに線香を捧げて一礼、香を焚いて一礼する。
 次に、導師は座具を広げ五体投地の礼拝を三度繰り返す。和尚さま方も倣う。同時に参会者も維那和尚*の合図を頂き合唱、礼拝を三遍繰り返す。ご本尊様、ご開山さまやご先祖様へのご挨拶である。
 続いて、献湯菓茶…ご本尊様にお蜜湯、お菓子、茶などをささげ、読経に移る。

 彼岸の法要は、ご開山傑堂義俊さまから、31世大圓禅覚大和尚までの歴代住職さま方。そして、檀信徒家ご先祖さまの亡き霊に祈り、感謝し、子孫の安らかな暮らしを願うことにある。ご存じの方もおられようが、仏教の盛んな国の中では日本独自の行事であり、24節句の春分・秋分の日を中日として前後3日間…の計、1週間を指す。
 伝わるところによれば、聖徳太子の頃より始まり、平安時代初期から朝廷で行われ、江戸時代には庶民の間でも年中行事化し、信者はこの間、寺参り・墓参りを行うのが習わしとされた。此岸(迷いの世界)から彼岸(悟りの世界)へ向かう仏道精進ともいえる(『岩波仏教辞典』より)。

 維那和尚さまの経題読み上げの後、読経に入り法語の奏上と続く。
 やがて香炉が回され、参会者全員が焼香。読経も終えて導師退堂、閉式となった。
 続いて清興の会(日頃のお疲れをいやすお楽しみ会)が予定されるところであるが、コロナ禍以降本年も延期となり、皆様方はマスクを直しつつ椅子を元に戻し、「暑さもそうですが、早く収まり、スッキリしたいですね!」と、お互いに労わりの言葉を掛けつつ、それぞれの家路に向われた。
 
*維那和尚(いのう和尚)…法要の際、経題や回向文を唱える役僧。