令和7年3月17日(月)
風冷たいが、
のぞく晴れ間が嬉しい春彼岸
 予期せぬ寒波の襲来で「春」が遠のきつつあり、三寒四温ならぬ四寒三温?の日々が続く。寒暖の差が大きくご婦人方をはじめ外着に困惑する声があちこちで聞こえてくる。相変わらず「最後の寒波が…」と予報も騒がしいが、彼岸の入り17日は大きな寒波の直前らしい。
 
 その日、青空がのぞく天林寺境内は、いつものように風が強く、時折ぴゅーと派手な音を従え冷気が吹き上げてくる。それが収まると太陽光が全身を包んでくれる。冷たさと温かさ…対照して暖かさが倍増する。実に気持ちいい。
 時折の冷風が「春」の露払い役をしてくれているのだろうか。
 
 控え室では手に息を掛け談笑していた和尚さま方が鐘の音で本堂に移る。柔和な顔が引き締まり、背筋も伸びる。気配で参会の檀信徒様方にも緊張が走り、倣(なら)って身なりを整える。  
 大きく鉦が響く…、ついで小刻みに打たれ、強い一打音。やがて畳触りが聞こえ送迎を先頭に、侍者、侍香の僧を従え導師の方丈がご出座された。導師は鮮やかな緋の衣。速やかに須弥壇に向かい焼香される。 
 次に五体投地の三礼、導師にならって和尚さま方が続く、同時に維那(いのう)和尚(?)の声に従い参会者らもその場で合掌三拝する。今まで静かな堂内に、衣の絹づれ、足袋のすり音のみが響く…。
 導師は再び香を焚き、献湯菓茶(釈迦牟尼仏、高祖、太祖、ご開山様方にお蜜湯、お菓子と茶を捧げること)を務め終え、三拝する。次に経題が読み上げられ般若心経を唱和する。

「彼岸法要に移ります…」
 維那和尚の言葉に従い導師以下、参会者一同が三拝、まず経題が告げられ修証義が唱えられる。朗々と堂内を満たす経を浴びながら、唱和する人、和尚さまの動きを追う人、目を閉じ聴き入る人、経の文言にうなづく人、中に首をたれ全身?で聴く人もいる…。

 読経が続く中、檀信徒ひとり一人に回し香炉が渡され、本堂を一巡りする。それぞれ先祖様への謝恩と家内の安全を祈念し、香を焚かれたであろう。終えた人たちの顔は晴れやかで、やるべきことをなし得た安堵か、それぞれに明るい表情に変わって見えた。
 中で、小学生らしき男子2名、母に連れられての参列だ。動きのある前半は興味深く観察していたが、お経が続く後半は手足を伸縮しての退屈アクション?が目に留まった。式後インタビュー?してみた。
 よく似た二人…まず「お兄ちゃん?は」と聞く。ちょっと躊躇して近寄ってくれる。
「小学校?」には「3年生!」と元気。「お経はどうだった?」「分んなかった」「眠かった?」「言葉が難しかった…」「…… 」
 そこで「弟さんは?」…アッと気が着いた。あわてて「ふたご…さん?」「うん!」続いて、「分かったのは、〇〇さんの教えに従うように…と言ってたよ」と経の大意をとらえた返答だった。…恐るべし素直な聴覚、邪心なき心、と感じ入った。

 帰路、どこかに春の兆しは?と境内の花木を覗き込む。いずれも蕾はかたく、天林寺の春は「今しばらく」の様相だった。ひそかに待つ木々の芽に、恵みの雨と優しい風を…と祈りつつ、坂を下った。相変わらず風は冷たかった。

*送迎(先ぶれ、先案内)侍者(線香を持つ僧)侍香(香台を持つ)維那和尚(読経の時、経題や回向文も読む)