平成21年2月11日(水)
初午大祭
暖かい青天の下「初午大祭」大いに華やぐ。

 数日前の寒波も遠ざかり、雨の心配もなく当日を迎えた。動き廻れば汗ばむほどの陽気?に準備の品並べに忙しい各店主の動きもなめらか。「春が近いねぇ」なんて軽口も出る風情。昨年も同じだが、ここ数年朝が早い。10時開店をめざして用意していくのだが、9時過ぎから境内にチラホラとお客さんらしき人が現れる。本堂では福引、天真閣ではお茶会…とそれぞれに準備を急ぐのだが、その人たちまでもが横目でお目当ての店を覗いていく。
 
「たくさん売れますように…」
 10時に5分前、方丈さまのご挨拶が始まる。
「ご苦労さまです!」と優しい呼びかけの後に「どうぞ頑張ってたくさん売って下さい」と気さくな激励で結ばれた。聴き入っていた店主たちの拍手で、いざ開店となる。
 今年参加されたのは42軒とボランティアの電気・音響担当の上妻さん(アッド遠州)、大谷さんら。雰囲気を盛り上げてくれるのは大道芸の田中道夫さん、マジックバルーンの岡野さん。毎年のご出演ながら毎々新しいワザを披露してくださり、ファンを飽きさせない。そのご努力には脱帽、深く感謝したい。加えて昨年初登場の酒井章英さん率いるセンスのいいバンド…『桜々』(ショーエイバンド、とも言う)。美形三人にスキンヘッドのミュージシャンの妙!そして、クロマチックハーモニカ独奏の岩崎さんも新曲を引っさげての連続出演だ。いずれも稲荷楽市の趣旨を理解し、楽しい盛り上げに多忙な中を割いて駆けつけてくれた。特に『桜々』の酒井さんはお茶席スタッフのお役をぬってのギター演奏だから、着替えもできず和服姿そのままで、忙しい忙しい熱演である。
「お久しぶりですね」と「はじめて?」!
 お店や商品を通じて「顔なじみ」になることも多い。ふたこと三言話すと記憶がよみがえるのか、「昨年は…」なんて訊いて「初めて?」となったり「ひさしぶりねぇ」が生まれたりする。話は進むが目は商品を追っているので商談?成立は早く、手は財布に届いている。
 午前中から人の出は活発で、呼びこみの声は境内を飛び交い、笑声も大きくなってくる。突然、鐘が鳴る…寺では珍しい「大当りぃ!」のジャラン、ジャラン、である。急いで振り向くと、満面笑みの児が「大当り」にテレて母親の陰に隠れてようとしている。周囲からはオメデトウ!の声とほほえみのマナコ。鐘は騒音に消されつつも、なぜか暖かさが漂う。
「バルーン」に列!煙も出た…「大道芸」
 幼児に大人気のバルーン。いつの間にか長い人の列。親に手をつながれて待っている。母子の視線を受けて、ひとりでがんばる岡野さん…。すぐ横で「大道芸」が始まった。音のするたびに振り返る順番待ちの児たち。近付きたいが風船もほしい。中には列を飛び出し母に引き戻されている児もいる。しぶしぶ「大道芸」を横目で睨んで列に戻る。改めて仰ぐ視線の先には岡野さんの真剣な顔、汗が吹き出ている。
 煙がモクモクと立ちのぼり「ああっ」と周囲を沸かせたのは大道芸の田中さん。毎年新しい出し物が加わり「バルーン」と共に楽市名物となりつつある。今年も新演目を追加し堂々の好演。ますます磨きが掛かり、親子連れをはじめ大人の目も釘付けにしている。
広がる人気…、満席続くお茶席の天真閣
 年々すっと天真閣に入られる方が増えている。楽市をぐるっと廻って控えに座る方、膨らんだ買い物袋を脇に順番を待つ方…。「やはり、頂いて帰らないと落ち着かないわね」と常連?と思しき方、と人それぞれ。
 中で目を引いたのは幼児が数多く訪れたこと。ちょこんとイスにかけ大人に混じって身動きも少なく、「場」をわきまえている。脇の母親も落ち着いて一服召されている。普段、落ち着きがなくて…躾が…と嘆いている輩に見せたい光景である。後でわかったことだが、珍しいとも言えるその秘密は、お寺で行われている月一回保育園児への「お茶会」にありそうだ。うれしい光景に出交わし「古しえのよさ」を再認識!なんて堅いことは申さぬが、ほほえましく心踊るようなお茶席のヒトコマでした。
 定刻どおり3時より萱垣稲荷荼枳尼真天の法要が始まり、大般若の転読もされた。ねんごろにご祈祷を込めた縁起餅が投げられた。
 「ワーッワー」と「こっちこっち!」の声。例年通り笑顔の人、残念がる人、悲喜こもごもの数分間であった。ため息だけが境内に満ち、やがて戦果を語りながら帰路につく。   
 陽も傾き寒くなってきた。「歓喜の後の寒気だね」なんてシャレてた人もいたが、ウケは少なかった。
 来年も暖かく、好い天気になってほしい。