平成21年3月17日(火)
春の彼岸法要
急ぎ足の春…が見える!
 暖冬といわれ、各地で生モノたちの異常活動が目立つ。気の早い白木蓮(ハクモクレン)などは、すでに散って歩道に無残な姿をさらしている。まさに花の命は…であり、派手で芳香豊かな花ゆえにその末路は痛々しい。
 彼岸の入りはウイークデーの17日。早朝から次々に訪れる檀信徒さんの姿は三々五々ながら引きも切らない。さぞかし、ご先祖さまもお喜びであろう。墓地だけでなく、お位牌堂に詣でて頂くのが普通だが、お墓だけで帰られていく方もいる。
 法要は午後からはじまる。本堂に参ずれば方丈さまはじめ、和尚さまに従い読経供養もでき、香炉が回されるのでご先祖様へのご挨拶もでき、気持ちも落ち着く。
 1時半前、鉦が響きご詠歌が本堂に流れる中、大きな鐘が鳴り法要が始まる知らせ。位牌堂から戻った人も座り始めた。本堂右手…東脇間には、今年も長い和紙の書き物が衣桁に掛けられ「何か」がありそうだ?と知らせている。
 和尚さま方が控える中、導師の方丈さまが払子(ほっす)を手に入堂される。香を炊き三拝、案内があり檀信徒も続く。お密湯などをささげる「献湯菓茶」を終え三拝する。厳粛に流れる諸事に気持ちが洗われる。堂宇いっぱいに般若心経を唱え回向文を読誦、再び一同三拝にておつとめが終わる。
 続いて「彼岸法要に移ります」のご案内があり、修証義第4章、5章を唱え、ご先祖の安らかならんことを心から念じた。お経の流れる中、回し香炉が全員をめぐり、それぞれにご先祖様への感謝を念じた。
 和尚さまの案内で里みちこさんの「詩語り」が開催されるので、東の間に移られるよう告げられる。参詣客の位置に合せ、衣桁もさらに南へ下る?やっと、5メートル余りの和紙の謎?が解き明かされる。はじめての方には不可解であったろうが、昨年に引き続き、里さんの静かだが凛とした声が堂内を走る。ご存知の人も増えているが、
「詩語(しがた)りびと」として全国各地にて講演・展覧会を開催、人の命の大切さを訴え、人々に元気を植えつけている。また、もったいない精神論者で廃物活用の名人。棄てられる運命の布も里さんに掛かるとおしゃれな上着として生きてくる。今回も新作?を脱ぎ、種明かしをすると会場からは「アッ!」と驚きの声、穴の開いた一枚の布を上手に着こなしていたのだ。
お話のテーマは、「師への手紙」。多くの教えを受けた伊藤千代さんの思い出を一つ一つの大切な教訓として生かし、つづられていく。中でも節々に「詩」を紹介しつつ、人生の邂逅の大切さを訴えられた。
「字」の持つ意味合いと、「字」が作り出す言葉の意味合い・ムードをウイットを交え紹介していく。そのリズミカルな表現は聞く人の心に躍りこんでくる。深くうなずく人がほとんどだが、中に笑みは浮かべているが目は潤んでいる人もいる。聴く人それぞれの反応は「邂逅の徳」そのものに満ちていた。質問にもていねいに答え、話を終えられた後も、耳だけでなく目からも吸収したいとばかりに「詩集はありますか?」「次はいつ見えますか?」と里さんを取り囲んだ人の輪は長らく解けることはなかった。
 それを見て方丈は、「来年もお話してもらいましょうか」とつぶやかれた。もし実現されれば、里さんにとって大阪城での詩語りは15年目に入り、わが天林寺では4度目の春、ということになる。