平成23年3月18日(金)
春の彼岸法要
大きな災害の後に、粛々と…。
 去る11日に東北・関東地方を襲った地震・津波の被害は日を追うごとに増大、音信が通じ事実がつまびらかになるにつれ、多方面への被害の甚大さが伝ってくる。前代未聞の被害の爪あとは原発破壊を引き起こし、日本国民はもとより、全世界にまで恐怖を与えている。被災された方にお悔やみ申し上げると共に、一日も早い復興を祈りたい。
 例年は寒波でもどこかにのどかさを感じ、春の到来を探り合うのに、今年は人が集まれば被災者の話で持ちきり。眉をひそめ小声で安否を気遣い、同情が寄せられている。

寒い本堂、背筋を伸ばし…
 広い本堂にはストーブがそこかしこに配置され、周りから席が占められていくが打ち出しの10分ほど前から鐘にのってご詠歌が奏でられる。墓参や位牌堂の焼香を終えた檀家さんが集まりだした。
 
 やがて鐘の音と共に送迎・侍者(線香を持つ僧)・侍香(香台を持つ僧)を従え方丈が入堂される。緋の衣が鮮やかであり、払子(ほっす)の白が一段と目立つ。須弥壇前に進まれ香を炊き三拝、案内に従い檀信徒も続きその場で三拝。無言の中でお密湯などをささげる「献湯菓茶」が続く。古から伝わり流れるような所作は終始無言。衣擦れの音、畳をする音しか生まない。列席する檀信徒の気持ちも洗われ、亡き人やご先祖と静かにお話できるような思いに駆られる。 
 
 堂宇いっぱいに般若心経を唱え回向文を読誦、再び一同三拝にておつとめが終わる。
 「彼岸法要に移ります」のご案内があり再び一同三拝。修証義を唱え、ご先祖の安らかならんことを心から念じた。荘厳にお経が流れる中、回し香炉が全員を巡り始める。参列者それぞれが想いを込めてご先祖様へ感謝を伝え、人の平安、家内の無事を祈念した。
素直に、こころ慰められる
 すでに5年目、おなじみの里みちこさんが紹介され、「詩語り」が開催される。
本堂東の間いっぱいに衣桁(いこう)が拡げられ長い和紙が掲げられている。5メートル余の和紙にはやさしい個性的な字で「詩」が流れている。講師、里さんのお手製である。        
本日の演題は生かすことを教わった、『先生への手紙』。
40代半ばで花園大学に入学、薫陶を得たこと、阪神大震災でのボランティア活動から感じたことなど、よく通る里さんの声が堂内を走り始める。素直に事実と人に向かい合い、人生の機微に触れる出会いをゆっくりと語る…人との愛に目覚め立ち直る人、支えられ元気を取り戻す人…など。やがて、聴き入る人の目も潤んでくる。事実を捕らえ伝える、生きたことばが心に届き、染み入るのだろうか。
 里さんは「しがた(しがたの)りびと」として全国各地にて講演・展覧会を開催、人の命の大切さを訴え、元気を植えつけている。その一方では、リサイクルの名人!を自称するほどの「生き還らせ屋」さん。ご専門の詩の表現も使い古しのかまぼこの板を使ったりしているが、着るものもユニーク。今日の衣装もスカートを活用してのオリジナル。世界にひとつ!とおどけて見せたが、その「創意と工夫」には一同唖然。リクエスト?に応じ2度まで種明かしをされたが、その度に「あ〜ぁ」「ふぅ〜ん」「あっ分った!」の嘆声しきりだった。
今年も聴く人に多くの感動が伝わり、元気の素が持ち帰られた。