平成23年9月20日
秋の彼岸法要・清興の会
湿度高い中、彼岸の入り
 「オペラと歌曲の話」大いに沸く


 本堂から流れるピアノの音に墓地から帰る人も耳をそばだて、フシギそうに立ち止まる。何だろう?
だが、位牌堂にお参りする人にはよく分かる。本堂・東の間のアップライトピアノから心地よいメロディが流れ出ている。弾き手は黒いドレスの女性…。清興の会のリハーサルだ。

ピアノを気にしつつ、ご詠歌を聴く
 ご詠歌が流れ、打ち出しの鐘が響く中、位牌堂からも正面玄関からも人が急ぎ参じる。何時もと違う雰囲気の人も多数見える。遠慮がちに遠くからご詠歌を聞きながら、須弥壇に手を合わせ座る檀家さんの動きを眺めている。オペラを聴きに来た人かしら?
 かまびすしい音は扇風機。台風が浜松を狙って?北上中だ。蒸し暑い風が本堂を覆う。いつの間にか内陣には近在の和尚さま方が対面、侍立されている。やがて遠くに鐘の音が生まれ、近付く。きぬ擦れも加わって耳に届き、緋の衣の泰覚文元大和尚が入堂。和尚さま方の間を歩み進み焼香される。
 静寂の中、ご本尊、釈迦牟尼仏、両祖大師(道元禅師、瑩山禅師)ご開山さま(傑堂義俊禅師)歴代ご住職、檀信徒諸霊に三拝九拝。続いて般若心経を唱える。
 ご詠歌をはさみ、「彼岸法要に移ります」のご案内に続き、修証義を唱える。敬虔なる読経が流れる中、参詣の一人ひとりに香炉が廻され焼香。それぞれに掌を合わせ祖先に感謝し、偲んだ。 

優しく誠実に語り掛ける…
 加藤宏隆さんは、用意した原稿を片手に「お寺で初めてのコンサート…」と落ち着いたご挨拶。初めての方にも分りやすく、と歌曲、オペラの違いやご自身の足跡、仏教との関わりなども話される。声域はバリトンとバスの間で、幅広い、と自己紹介された。
まずは、と耳になじんだ日本の歌を皮切りに、シューベルトの「ます」や「アリア」や「闘牛士の歌」などのオペラ曲、「帰れソレントへ」のナポリ民謡、など盛りだくさんの曲を見事なバスバリトンで披露された。   
 終盤は少し米国生活のご苦労を話されたが、やはり日本の歌が懐かしい、と武満徹の「島」ほかを歌い、ラストは「オーソレミーヨ」で閉められた。
朗々と本堂の天井に響く歌声に、よもやお寺で聴けるとは…の思いと共に堪能した、の満足が大きなため息として会場のあちこちから聞かれた。
「また、聴きたいッ!」と前の人。
「うん、うん」と首を上下したのはその隣の人。

彼岸いり お寺でオペラ 台風(かぜ)待たす