平成23年10月29日(土)
第23回 仏教に親しむ会
『大人の修行』
講師 ネルケ無方 老師
 「こんにちは!」、2メートルに達しようとする長身、声も大きく明瞭である。改札口を出られた下駄履きの講師は当然周囲の耳目を集める。
 さらに「浜松は初めてですか?」に「いや20年ほど前、奥山方廣寺に座禅を教わりに…。留学時代ですね」とのこと。何気ない言動にもエネルギッシュな息吹を感じる。異国で、しかもきびしい禅道場を導いて行く若き住職の迫力が伝わってきた。
 
 安泰寺のホームページで知ったという名古屋から駆けつけた方もあり、会場はほぼ満員。はじめての驚きの声が生じたのは講師の良く通る声とスムーズな日本語である。ユーモアを交え話は滑らかに進み、「7歳で37歳の母と死別、人はなぜ死ぬのだろうとの疑問を持った…。鈴木大拙の本と出合い、17歳ごろから日本に言って僧になりたいと思った…、と出家に至る生い立ちを話される。  
 続いて、禅をはじめとする修行の話に移り、誰でも仏性は持っている。空気みたいなものであるが、扇で仰いで風を起すこと。また、「座」…名詞と「坐」…動詞、との違いは行為を指すか否かである、と実践する事の大切さを説かれた。
 テーマの「大人」については小欲、知足、精進、知恵、などの言葉を挙げ解説をしながら、「自分の都合をなくし、自らに執着しない人」であると強調された。
 「ドイツ人は思慮深く論理的な人が多い、と聞かされていたが、目の当たりにして尊敬しちゃう!」といたく感動された聴講者も居られた。
確かに、1時間半のお話にて言い誤ることなく、一言の無駄も無く、しかもよどみなく話されたのは当「仏親会」に於いてはNHKアナ出身の講師以来のこと。裏付けとなる素養の深さ、持つ語彙の幅広さに驚愕したのは編集子ばかりではない、と確信する。