平成24年6月16日(土)
第24回 仏教に親しむ会
『今、こだますとき。』
―みすゞさんのまなざし―
講師 矢崎節夫 氏
 学生時代から逸材として注目され、金子みすゞを発掘、世に出した詩人として著名であり、「金子みすゞ記念館」館長として東奔西走、講演などに活躍されておられる講師は柔らかい物腰で登壇、やさしく語りだした。  

 登校時、先生方は子供たちの「おはようございます」に「おはよう」ではなく、「おはようございます」と・・・(・・・の)のように返してもらいたい、と強調される。こだまは言葉を減らさない。きちっと返してくれる。また、子供と接するとき、とかく上から目線になってしまうが、人は上から言われると上から応えたり、反発したくなってしまうもの。そして、「子供の誕生日は、父、母になった日。つまり、父さん、母さんの誕生日でもあるのだ」とも言われる。
また、昨今、自己中心の人が多いが、「私とあなた」ではなく、「あなたと私」のスタンスをとりたい。分かった、理解した、のunderstandは上目線ではなく、下に立っているのですよ、とユーモアも混じえて説かれる。
 44年前、大学1年のとき、『大漁』に出合ったことから、その後16年間に亘る「みすゞ探し」が始まった。そして、実弟との出会い、手書きの文集との出会い、いよいよ「みすゞワールド」の佳境に入る。静かな口調ではあるが、一つ一つの詩を引きながらみすゞのまなざし、生き方、人間性を語っていく。
会場は水を打ったような静寂が拡がる。席を立つ人もいない。やがて、目にハンカチを運ぶ人が増える。
あっという間に過ぎた90分であったが人はそれぞれにみすゞの心を理解、満足げな面持ちで会場を後にされた。中に2冊の本を小脇にしている人がいる。聞いてみると、「一冊は孫に送る!」と明るい返事が返ってきた。みすゞは語り継がれていくのだ、と思えて胸が熱くなった。
次回は平成24年10月28日(日)
講師は中村仁一先生
(京都大学医学部卒、診療所所長、『大往生したけりゃ医療とかかわるな』『老いと死から逃げない生き方』ほか)