平成24年10月28日(日)
第25回 仏教に親しむ会
「今」をしっかり生きよう
― 人は生きてきたように死ぬ ―
講師 中村仁一 氏
 今年の正月に『大往生したけりゃ医療とかかわるな』(幻冬舎新書)を発表以来、多くの人の話題を呼びマスコミからも注目された講師であるが、物腰は柔らかく、気さくに応じてくれる。話しやすく、おごりなど微塵も感じられない。まさに生と死の間の人生を達観され、楽しまれて居られるような風情である。  

レジュメに食い入る目、目
 聴講希望者が220名を越え、会場をいつもの天真閣から急遽本堂に変更して開催された。あいにく小雨にたたられ若干の欠席者も出たが、熱心な方は1時間も前から並ばれ関心の深さが伺えられた。
 渡されたB4、4ページにわたるレジュメを手に会場は厳粛な雰囲気に包まれたが、話し始めるとユーモアに満ち、歯切れのよい口調に親しみを覚えるのか、会場のあちこちから柔らかな笑いさえ生んでいった。
永年の現場での経験から、生れて繁殖期を終え死にいたる人生の中で、医療の限定利用と死に抵抗せず周囲に感謝しつつ逝くのが望ましい、と断言された。
「死」からは逃げられない、ことの自覚
 その中で、医療に関して重大な誤解と錯覚があることを具体的に説明、自然治癒力の大切さ、医療のやってみなければ分からないという不確実性と老いや死への無力という限界、があると説く。そして、「医療と介護が穏やかな死の邪魔をする」とデータを示しながら伝え、「老い」と「病」のはき違いや生活習慣病は治らないゆえ、一病息災…病気と共存し、闘病はしない。がんも老化のひとつであると一刀両断、医療はしょせん老いて死ぬという枠は破れないと強調された。
 結びに入り、死からは逃げられない。目をつぶる瞬間「良い人生だった」と思える為に、常日頃から本人も家族も死を視野に入れ、共に考えたり、その備えをしておくことが肝要。そして、死に方は生き方であり、人は生きてきたように死ぬ。大切なことは、「今」を大切に生きることであり、点検・修正を繰り返しながらその日まで「生ききりましょう」と明るく呼びかけられ、お話を締めくくられた。