平成25年6月15日(日)
第26回 仏教に親しむ会
『世話女房』
― 歌舞伎役者の妻を生きて ―
講師 中村雅子 氏
 一昨年逝去された名女形・中村芝翫丈の奥様で福助、橋之介の母であり、過日惜しまれて世を去った勘三郎の義母、従って勘九郎、七之助の祖母…と語れば、現代歌舞伎界を陰で支える立場もご理解が得られよう。そして、タイトルの意味合いも「まさしく…」と推測できよう。
…とは言うものの、講師の中村さんは物腰のおだやかな親しみやすいご婦人である。
 天林寺との関わりもさり気なく話され、つくづく人とのご縁のありがたさや、互いに応えて動く人の付き合いのすばらしさが身にしみた。 新聞にも連載されたようであるが、語りなれた口調は言葉もやさしく、耳に入りやすい。一つ一つのくだりの中で頭が波のように揺れて「うなづく」のがよく分かる。時々、オーッとどよめきが生まれるのは、勘三郎と次女・好江さんの馴れ初めや歌舞伎界の秘めた話題に触れた時…である。
 また、身内にまで病状を隠し闘病し続けた、勘三郎とそれを理解し支えた妻・好江さんの夫婦愛を涙ながらに語り、会場内の涙腺を刺激した。

 詩の朗読を天林寺の奥様がお手伝いするという味な「ハプニング」もあり、大いに客席を沸かせた。