平成26年7月15日(火)
山門施食会(盂蘭盆会
 急に天候が変わることが多く、局部的な雷雨の急襲?も珍しくない昨今、気象予報も「不安定です。急な変化にご注意ください」が常套句になっている。ほんに自然は侮れない。例年と違い、梅雨明けの情報もなく蒸し暑い日々が続いている、火曜日の施食会。
 
 この日、玄関先の部屋に陣取って総代さま方は「受付」をなさる。受付を済ませた新亡家の皆さまは位牌堂に詣で、本堂での法要に臨まれる。ウイークデーとあって学童や若い人の姿は少なく、主婦と思しき人や年配者が多い。扇風機は懸命に回っているが、さわやかな風の通り道には負ける。それでも首振り範囲内?から座が埋まっていく。一方では打つ鉦の音もそろい淡々とご詠歌が続けられている。いつものセミの声はなく、文言は堂内に染み渡り周囲にも流れていく。
1時を過ぎた頃には堂内は白と黒に埋まった。新仏となられたお身内を慰めるための大切な法要ゆえ、喪服にあらため参列される方が多いからである。
 
 鐘がつかれ、法話の開始が告げられる。本堂内の私語も消える。侍者らを従え井上貫道老師(掛川市少林寺ご住職)が入堂、五体投地の礼拝を3度繰り返し、高座に上られる。

「気にかかることはありませんか?」
 日常の平易な言葉で話しかけ、優しくわかりやすい例えで説かれる…貫道老師のお話には多くの人が惹かれる。今日も語る言葉の一節、一節にうなずく頭が波打っている。
 
 話を結ばれ、普回向の「願わくはこの功徳をもって…」と唱え、「暑い日ゆえお体をいとわれるよう…」と堂内に一語を残し高座を降りられた。
 
 まもなく、本堂の鐘と遠くの鉦が呼応して打ち出され和尚さま方が入堂、須弥壇を挟んで向かい合わせに立ち、導師の入堂を待つ。堂内は再び静まり、緊張感が漂う。
ご先祖を供養する…
 送迎を先に侍者、侍香を従え、淡黄色の衣をまとった文元方丈が入堂、焼香、五体投地の礼拝に移る。案内の声に従い、新亡家を始め堂内の檀信徒も掌を合わせ、三拝、法要に入る。
 献湯菓茶(ご本尊様に蜜湯、菓子、茶をささげる)を終え、経題に従って読経。初めてと思しき参会者は、掌を合わせたまま頭を右へ左へと曲げ、静かで厳かな動作を追い儀式の流れを目に刻む。
 お経が読まれ、続いてご詠歌の♪寝ても覚めても…が堂内に響く。
 導師に倣い和尚さま一同も精霊棚に対する。「山門施食会に移ります」の案内が発せられ、ふたたび読経が始まる。
 やがて導師は新仏の戒名を朗々と読み上げる。新亡家の身内は耳を凝らして聴き入る。言わずもがな、檀信徒さま、三世十方法界の万霊も供養申し上げる。
読経が続く中、導師、僧侶、檀家総代に続き、新亡家のご家族から順に精霊棚に水を手向け、法要は無事終了した。
お送りする
 19時、方丈さまはじめ僧侶が山門前に出座され、精霊送りの法要が営まれた。
 檀信徒をはじめ多くの市民が参拝され、お飾りが納められる。市民にとっては夏の風物詩。梅雨は明けず、セミの声もまばらだがいよいよ暑い夏…の機運到来を感じる行事でもある。
 法要が終わる頃、墨色を増した薄暮の中、炊き上がる炎や露店の灯りは目に鮮やかに浮き上って見えた。今日も暑い一日だった。