平成27年7月15日(水)
山門施食会(盂蘭盆会
 雲ひとつなく抜けるような青空が広がっている。風はあるが、暑い。2、3日前より台風発生、接近、上陸の見込み?と伝えられている。嵐の前の静けさか?
 今年も新亡家の受付は玄関先の部屋。総代さま方が「受付」をなさるが人手が足りず、奥様が応援に加わった方もいる。
受付を済ませた新亡家は、親族うちそろい位牌堂に詣で、本堂での法要に臨まれる。
 すべての障子が開け放された本堂は涼風の通り道。焼けた地表を這う風と違い、乾いた風は心地よく吹き抜けていく。ご婦人などは乱れる髪を抑えるぐらいだ。今日は扇風機いらずかも知れない。
 
 1時半、鐘がつかれ法話の開始が告げられる。侍者らを従え井上貫道老師(掛川市少林寺ご住職)が入堂、五体投地の礼拝を3度繰り返し、高座に上られる。

「日々の暮らしの中に教えはありますよ」
 仏さまや禅の教えを知ろうとか学ぼうと思っている中で、何か誤解をしてはいませんか?と優しく問いかけ、日々の暮らしの中に仏教の教えはあります…と分かり易く諭していかれる。決して特別のことを求める訳ではなく、事実は事実として、ありのままを認める中で暮らすことを強調された。
 貫道老師のお話には多くの人が納得、同意される。語る言葉の一つ一つが分かり易く、身近な例えを持って話されるからである。
 今日も穏やかな呼びかけで話を結び、深くうなずく頭(こうべ)の波が立つ中、高座を降りられた。

 まもなく、本堂の鐘と遠くの鉦が呼応して
打ち出され和尚さま方が入堂、須弥壇を挟んで向かい合わせに立ち、導師の入堂を待った。堂内は静まり、いよいよ緊張がみなぎった。
ご先祖をお迎え、供養する…
 送迎、侍者、侍香の僧を従え、導師を勤める文元方丈が入堂、焼香、五体投地の礼拝に移る。案内の声に従い、新亡家をはじめ堂内の檀信徒も掌を合わせ、三拝、法要に入る。
 献湯菓茶(ご本尊様に蜜湯、菓子、茶をささげる)を終え、経題に従って読経。子供はもとより初めてと思しき参会者は、静寂の中でテキパキと進む厳かな動作を珍しげに目で追う。掌は合わせたまま頭を右へ左へと曲げ、式の流れを目に刻んでいる。
 お経が読まれ、続いてご詠歌の♪寝ても覚めても…が堂内に流れる。
 ご詠歌が続く中、導師に倣い和尚さま一同も精霊棚に対する位置に替わる。
「山門施食会に移ります」の案内が発せられ、ふたたび読経が始まる。
 やがて導師は新仏の戒名を朗々と読み上げる。新亡家の身内は耳を凝らして聴き入る。言わずもがな、檀信徒さま、三世十方法界の万霊も供養申し上げる。
全堂に響く読経の中、導師、僧侶、檀家総代に続き、新亡家のご家族から順に精霊棚に水を手向け、個々それぞれにご先祖を供養し法要は無事終了した。
お送りする
 19時、方丈さまはじめ僧侶が山門前に出座され、精霊送りの法要が営まれた。
 檀信徒をはじめ多くの市民が参拝され、お飾りが納められる。市民にとっては夏の風物詩ともいえる大切な行事。梅雨明けが待たれいよいよ「夏本番」の思いが生まれてくる。
 落日から薄暮と空の色も変わり、法要が終わる頃には炊かれる火も一段と鮮やかだった。そして、品選びに迷う児を急かす祖父母のやさしい困惑の声が、例年通り聞こえてきた。