平成28年2月11日(木)
「初午大祭」大繁盛、てんてこ舞い、売り切れゴメン
スタンバイ
「今年もよろしく…こちらこそ!」「天気が好いので…助かるねぇ」あちこちで明るく交わされる。
慣れた作業だが、開店準備は店主にとって何かと気忙しいもの。一年振りの挨拶もそこそこに手伝い方に指示を出し、自らも手を休めることはない。

 テント張りの店が増えたように思われる。雨や日差しを防ぐ以外にも店の雰囲気をかもし出し、独立観が生まれる…いわゆる「店構え」が出来る。今年は区割りもゆったりと仕切られているで、皆さんそれなりに飾りたて商品をアピールされている。

 裏方であるが、電源の配線作業が忙しい。広い境内、あまねく配電されてはいない。希望の電気量を確保できず自家発電に頼らざるを得ないが、騒音は極力抑えたい。悩むところだが、十年来ご奉仕いただいているEコードさんが処理してくれる。急な依頼も笑顔で対応してくれ、ただ感謝するのみである。
 
 天真閣に通う人影が増えてきた。着物姿でお茶道具を運び込んでいる。年々客人は増えて大繁盛、とのこと。今年も立礼と二席でお迎えするが裏方はてんてこ舞いの忙しさ…、しかし、細やかに動いている姿といえども見る目にはゆかしい。
 
 天候に左右されることなくお客さま?を迎えられるのは「福引き」を主催する稲荷講の役員さん。準備態勢を整え、にこやかに座られている。周りは景品の山。今年もここから「福」が飛び出ていくのだ。

本番スタート

 9時30分を今か今かと待っていたお店とお客さまが問い掛け合う。隣り近所の声につられて徐々に声が大きくなる。商品を指して交渉するひと、手にとって訴える人、両手に品を掲げ答えを乞う人…、それぞれの商いが始まった。
 一方、横目で眺めながら衣装替え?する人もいる。大道芸の田中さん、バルーンアートの岡野さんだ。共に10年余ご出演のボランティアで、欠かせない存在である。
おやっ、スピーカーからはハモニカの「テスト音」が流れだした。本番は近いぞ。そういえば、バンド『春がきた』メンバーも座り位置を確かめている。
いよいよ音の世界も開幕だ。
 野菜やさんの店先は人垣が出来ている。お茶屋さんの前も人が動かない。食べ物やさんでは客の肩越しに湯気が揺れている。山門から、両脇の登りからも人が続いて見える…。そろそろ自慢の『あまざけや』も開店だろう。
…かくして楽市は、境内狭しと多くの客を呑み込み全開、買い手も売り手も笑顔の絶えない稲荷祭りの幕開けとなった。

 穏やかな日和に人の足も軽い。昼のくぎりを忘れるかのように人の波は続く。しかし、中には売る品に事欠く店も出てきている。売れ足が早い、と言うことであろうか?
 一方、本堂前ではバンド演奏、大道芸、バルーンとそれぞれのパフォーマンスに人だかりがしている。身体を揺らしてリズムをとる人、ノッて手をたたき踊る子供、それを見て固まり?凝視する児。老若男女、こちらもそれぞれに受け止め同調…同和している。和やか…な空間と表現すればいいだろうか。

稲荷堂でのご祈祷

 鉦が打たれ正装に身を包んだ僧侶の縦列が動く。周辺がにわかに静まる。立帽子(たてもうす)をかぶる方丈の袈裟に目を奪われている。大祭の眼目、稲荷堂でのご祈祷が始まる時刻となった。
 
 約30分余でご祈祷が済まされる。いよいよ恒例の投げ餅のみを残すことになった。誰言うことなく人々は本堂前に集結、ざっと三百人は数えられるであろうか袋片手に座り込み、ご祈祷を受けた祝い餅がまかれるのを待っている。数分を待たずして方丈の音頭で餅がまかれる。
 宙を舞う紅白の餅、求めて挙がるもろ手、そして「こっち、こっち!」の声。やがて、かざされる餅箱の底。豊漁?を語る高い声と無念!の深いため息…。
 こもごもの思いを言葉や背中で語りつつ大きな集団は散っていく。
 
 立春は過ぎたとはいえ日ごと寒波襲来が告げられる中、風も無く穏やかな一日であった。