平成28年5月29日(日)
第30回 仏教に親しむ会
『金子みすゞの詩と仏教』
講師 酒井 大岳 氏
 今やトレードマーク?と化したスニーカーを履き、軽やかな足取りで改札口に見えた酒井老師は変わらぬ明るさで手を軽く振り、合図を下さった。浜松駅頭でのことである。
 車中、打ち合わせの間、よく通る歯切れのよい声とキビキビとした動きに、昭和10年生まれとは信じがたい思いを強く抱きつつ、控え室から壇上へとご案内した。

記念の30回に、10年ぶり3回目の登場
 会場を見渡し「再会の方は…?」を問いつつ、10年ぶりであることや当会の継続に敬意と祝意を寄せられた。
 ご持参のレジュメ説明の前に…と金子みすゞの生い立ちを簡単に紹介、発掘者の矢崎節夫先生とのいきさつや「みすゞ」と呼び捨てで無く、ごく自然に「みすゞさん」と呼ぶゆえんを語られた。また、生きておられれば112歳になられると追憶しつつ、86歳と高齢ながらお元気な一人娘、ふさえさんのことにも触れられた。

ネパールの「みすゞ小学校」
 インドに近いルンビニ県に1995年の暮れに小学校が誕生した。先に酒井老師が尽力していた学校づくりの話を聴いた矢崎氏が共感、ともに全国のみすゞファンに呼びかけ集まった浄財で設立された。しかも、開校式には感涙にむせぶふさえさんの姿もあり、更に30キロぐらい離れた地にも、もう一校あるという。死しても意志は伝播していく…。
 言外に、人の心を打つ詩の力の大きさ、人のつながりの偉大さ、意志あるところに叶う夢…などの想いを込めつつ前段の話を終え、レジュメに目を移され本題に入っていった。
一編一編に優しく、深い思いやりが…
 レジュメに記した「木」「つもった雪」「金魚のおはか」など8編の詩を紹介、詩の背景と解釈を加えられ、時間の許す限り「みすゞさんの世界」を展開された。
 詩に潜む深く大きな意味合いを説かれ、うなづく頭は、会場のあちこちに波のように広がっていき絶えることは無かった。それはまさに、みすゞワールドそのものであった。