平成28年7月15日(金)
山門施食会(盂蘭盆会
 雨が降らねばよいが…と心配されたが、雲が多いとはいえ、降雨の心配はなさそう。今年はカラ梅雨といわれているが、陽光の厳しさは夏そのもの…梅雨明けは近いであろう。
 新亡家の受付は玄関先の部屋。総代さま方が「手続き」をなさる。人手が足りず、奥様が応援に加わった方もいる。
受付を済ませた新亡家の皆さまは、位牌堂に詣で掌を合わされた後、本堂に座られる。
 街中とは申せ、天林寺は山の上。しかも本堂は際に立ち、風がよく通る。障子が開け放され涼風の大通り。天然?の風は心地よく、服地を通り抜け汗を吸い取っていく。しかし、時にはご婦人の髪を乱すいたづらを仕出かし、去って行く。
 
 1時半、侍者らを従え井上貫道老師(掛川市少林寺ご住職)が入堂、礼拝をされ高座に上られる。
「ボタンの掛け違い、ありますよ…」
 冒頭、右左に分かれて座った聴講者に向い、「右を見てください」と言い、向い合わせゆえに逆のほうを示した現象…同じ指示に逆の動作…を踏まえ、話を進めていく。
 日ごろ、種々の問題の中で、誤解をされたまま行動している事例を挙げ、分かり易く話される。その行き違いの原因は人が「頭の中で考えていることと事実は違う」ことと断言。特別のことを求める訳ではないのに、自らの思いのみで考えがち。本来は、お互いに事実は事実として、ありのままを認める中で暮らすことを強調された。
 貫道老師のお話は分かりやすい、優しいと多くの人がうなずかれる。身近な例えを挙げ易しい言葉で表現されるからである。今日も穏やかな助言で話を結び、高座を降りられた。

 お互い法話の感想を話す暇もなく鐘と遠くの鉦が呼応して鳴り和尚さま方が入堂、須弥
壇を挟んで向かい合わせに立たれると堂内は静まり、ふたたび緊張がみなぎった。
ご先祖さまをお迎え、供養する…
 導師の文元方丈が入堂。焼香、五体投地の礼拝に移る。案内の声に従い、新亡家をはじめ堂内の檀信徒も掌を合わせ、三拝。法要に入る。
 献湯菓茶(ご本尊様に蜜湯、菓子、茶をささげる)を終え、経題に従って読経。子供は親の手を振りほどき、初めての参会者は、右に左に身を曲げて僧侶の動きを追っている。大きな本堂で20数名の僧がそれぞれの持ち場で静かに、素早く、正確に進める所作に感嘆、珍しさも手伝って掌は合わせつつ頭を右へ左へと曲げ、式の流れを追って行く。
 お経が読まれ、続いてご詠歌の♪寝ても覚めても…が堂内に流れる。
 ご詠歌が続く中、導師に倣い和尚さま一同も南側にしつらえられた精霊棚に対面する。
「山門施食会に移ります」の案内があり、ふたたび読経が始まる。
 やがて導師は、檀信徒さま、三世十方法界の万霊、そして東日本大震災の犠牲者の供養を申し上げる。読経をはさみ、次には満堂の隅まで響く声で新仏の戒名を読み上げる。聴き入る新亡家の身内は耳を凝らし、身を硬くしてかしこまる。
続いて全堂を揺るがす読経の中、導師、僧侶、檀家総代に続き、新亡家のご家族から順に精霊棚に水を手向け、個々それぞれにご先祖を供養し法要は無事終了した。
お送りする
 19時、方丈さまはじめ僧侶が山門前に出座され、精霊送りの法要が営まれた。
 檀信徒はもとより近くの市民が参拝され、お飾りが納められる。市民にとっても夏の風物詩ともいえる大切な行事。梅雨明けが待たれ、いよいよ「夏本番」が次に控えている。
 
 法要が終わる頃には、時季とはいえ夜の帳もおり、焚かれる火も一段と鮮やかだった。