平成29年2月11日(土)
「初午大祭」寒さに負けず、にっこりと
 まだ7時過ぎ、と言うのに幼い子供をあやしつつテキパキと動いている。伺うと「今朝、天竜に行って仕入れてきたッ」と新鮮さが命の商品を見せてくれた。なんと暗いうちからの準備…、と頭が下がる。

 気になる新規参加店は4店、顔なじみだが2年ぶりに再登場するのが3店、と新しいムードが流れそうである。一方、娘の結婚式で…とおめでた欠席店?もあり、お店の所在も若干変わってきた。
その点、忙しくなるのが電源の配線。騒音と臭気を避けよう、と発電機の活用を極力押さえる努力をしている。その力強い裏方は今年も『Eコード』(市内北区)さんが努めてくれている。急な依頼にもスピーディに対応され真にありがたく、ただ感謝するのみである。
 
 8時を回わり人の数が増えてきた。不思議なもので、人の影や声が高まるとこの冬いちばんと言われる寒気漂う境内が暖かく感じられる。雲の間の太陽光もありがたい。天真閣に出入りする和服の裾模様も、あでやかに輝いてくる。今年も立礼と二席でお迎えするが裏方はてんてこ舞いの忙しさ…、前日も朝から準備に入ったらしいが、本番には本番の用があり、何かとせわしいものだ。
 一方、天候に左右されることなくお客さまに対応できるのは本堂内の「福引き」。長年続いた慣れた手順で備え万全、稲荷講の役員さん方は軽口も飛び交う余裕、暖を取りつつ和やかに待っている。例年に勝る景品の数々…さて今年の「福」はどなたの手に…。

方丈ご挨拶
 準備に忙しい中でもお客さまの声がかかる「販売は9時半から…デス」のマイクでの警鐘との間で困っている店もある。「当店はルールどおりに、販売します…」となれない言い訳をする方もいる。目の肥えた買い手は気も早い、財布片手に言い寄っている。
 
 9時30分キッカリに方丈のご挨拶。続いて、4月の大本山永平寺ご授戒にての当山住職のお役目が披露されると、いっせいに拍手がわいた。特報として伝えられたが、長年集う店主も居合わせるお客様も喜び合う、お祝いの拍手となった。一気に全山が暖かさに包まれたように思えた。

 10時。ハーモニカ独奏・岩崎武夫さんの音だしに始まる、ボランティアの皆さんの活躍は稲荷楽市の名物、と言える。毎年、新ネタを仕込んで登場の大道芸の田中さんには、子供たちの「追っかけ」が出来ている。今年も一挙手一投足に視線と歓声が追いかけている。  
 追っかけられない、少し小さな幼児のねだるのはバルーンアートのいろいろ風船。抱かれた身を反らせ、ねだっている。せり出した手の向きに若いお母さんが抱っこのまま歩み寄る。
 大人にも子供にも人気上々!がバンド『春がいっぱい』。年に一度の結成、とは思えない抜群のハーモニーで人の「心」をつかんでいく。個性的なそれぞれのパート、演奏スタイル…。その軽快なリズムについに今年は「飛び入り」が現れた。なんと小学生の女の子、リズムに乗り愉しさを体いっぱいに表現していく。一目瞭然、実に愉しげ…観る人を魅了、視線独り占めの熱演である。取材に来た記者の目は鋭く、明朝の地方欄に大きく掲載されていた。

 稲荷堂に引き寄せる、ご祈祷の声
 15時きっかりに鉦が響く。正装に身を包んだ方丈が出座、お付きの僧侶の縦列も動く。周辺がにわかに静まり、列の行く手に注目が集まる。人の足も鳥居をくぐりお堂を覗きこむ。稲荷堂でのご祈祷が始まり稲荷楽市の大団円を迎えた。
 約30分余でご祈祷が終わり、恒例の投げ餅となる。気のせいか、例年より人手が少ない。寒さに負けた…と言わざるを得ないかと少々残念だが、事実は事実、認めざるを得ない。