平成29年3月17日(金)
春の彼岸法要
木々は芽吹くも、「春」いずこ
 最近はあまり聞かれないが、よく「三寒四温」の言葉は耳にした。中国北部や朝鮮半島の冬の気象を表したのが語源だそうだが、今年などは「お彼岸なのに四寒三温のようだね」の軽口がウケル。反応はいずれも苦笑い…が伴い、その後はどこか寒々しさが残る。
 一方、モクレン、櫻など草花は多少の寒暖は気にせず健気に花弁、つぼみを咲かせ膨らませ、春への準備を怠りない。例年変わらずじつに堂々たるものだ。本年は20日がお中日、当寺の彼岸法要は「入りの日」と決っていて17日に開催された。
 
煙にむせぶ位牌堂
 いつもはひんやりとしている位牌堂も今日は早朝から人の出入りが多く、お線香が焚かれ続け煙の揺らぎもおびただしい。奥の歴代ご住職の座はおろか、檀信徒の座も見通せない。詣でる人も香に包まれ、ご詠歌を耳にしつつご先祖さまに掌を合わせる。その祈る背中は丸く、優しい。

 本堂ではご詠歌が続いている。その中をゆったりとした動作で和尚さま方が須弥壇前に並列される。すでに本堂に座っている人も位牌堂を出る人も、法要の始まりを察し位置を決める。堂内の人すべてが方丈の出座を待っている。
 殿鐘(でんしょう=本堂の釣鐘)が鳴らされる。会話は中断、居ずまいが正され、堂内が静寂に包まれる。その中を遠くの鉦がかすかに伝わってくる。やがてハッキリ聴き取れる。その後は音色に加え、衣擦れと足袋のキュッキュッと畳を噛む音が聴こえ、緋の衣に身を包んだ方丈が登場される。地味な色の多い中、衣の鮮やかさがひときわ目立つ。衆目をよそに方丈はきびきびと舞うように動き、焼香し献湯菓茶をされる。
 
一人ひとり香を焚き、黙祷する
 読経のあと、「彼岸法要に移ります」の案内が発せられ一同三拝、修証義が唱えられる。
ご開山さまを始め代々の住職、各家のご先祖さまの安らかならんことを念じて堂内にお経の響きが満ちる。同時に、回し香炉が参会者のすべてに渡り、ご先祖様への感謝や家内の無事を祈念し黙祷、彼岸会法要は終了した。

「真心こめてお守りする…」
 お知らせがあり手足を伸ばしていると、早くも着替えた方丈自らがマイクを握り案内される。「講話」のコーナーの始まりである。
 第2回目のテーマは『お墓とは?』…
講師は平賀 剛氏。当地域有数の石材会社の経営者である。
 冒頭、お墓の3つの役割は…と前置き、
1−尊厳性…先祖を敬い感謝し、お護りする。
2−永続性…未来永劫お祀りし、つなげる。
3−固定性…根なし草に成らず、変転しない。
…と語られ、以下供養と歴史、墓石の造られ方、墓石選びの基本などの項目について丁寧な解説を頂戴した。
 質疑応答では方丈も加わり、お墓の大切さや現実の問題点を挙げ参会者の意見を求めた。日ごろは訊きにくい疑問も素直に飛び交い、真剣な意見交換の場となった。残って個人的に相談する人もいたが、総じて「フランクに訊けてよかった」「私ばかりの悩みではなかった…」「参考になった」などの感想が多く聞かれ、好評であった。