平成29年9月20日(水)
秋の彼岸法要・清興の会
秋の彼岸会
雨も遠慮する彼岸の入り
 ―清興の会で長屋噺や寄席踊りを堪能―

    
 各地に被害をもたらしながら列島を縦断した台風も当地では被害も少なく、三連休も過ぎ朝夕はすっかり秋模様。
 予報では曇天と告げられているが、20日は朝方より小雨がポツリ。午後の法要開始には如何だろうか、と気をもむ。小走りに墓参を済ませて位牌堂に回る人もいたが、昼を過ぎると少し空が明るくなってきた。
 天も彼岸の法要をご承知だろう、夕方まで一粒の雨も落ちてこない。
  
ご先祖への想いを込め、念じる…
 すでに本堂には緋毛せんを敷いた高座がしつられている。和尚さんの急ごしらえによる物だが、堂々たる舞台だ。位牌堂に詣でる人が行き帰りに眺めていく。見慣れた人は名前が記された「めくり」を見て「今度も踊るのかしら…」とか、「チョウカロウ?」と首をかしげながら独り言(ご)ちしていく人もいる。
法要後のお楽しみ…江戸落語は、未だ知る人ぞ知る…の秋の出し物であろう。
 
 殿鐘(でんしょう・本堂西隅の大鐘)が法要の定刻を告げると檀信徒はそれぞれに座りはじめ、近在の和尚さま方も入堂される。静かに須弥壇の前に立ち導師を待つ。
 七下鐘(導師の登場を告げる鐘)が鳴らされ、帽子(もうす)に明るい緋の衣をまとい白い払子を手にした方丈が入堂、まずは焼香される。  
 参列者は僧侶にならって三拝する。僧侶にならう、とは、ご本尊、釈迦牟尼仏、両祖大師(道元禅師、瑩山禅師)、ご開山さま(傑堂義俊禅師)、歴代ご住職、そして檀信徒諸霊への三拝九拝のことである。続いて般若心経が読まれる。
 ご詠歌が唱われ、「彼岸法要に移ります」の案内があり、修証義が唱えられる。やがて読経の中、堂内の一人ひとりに香炉が廻され、その場で焼香する。誰もが祖先を偲び、今日ある自らを省み感謝し、親族の平穏無事を願う。真に心をこめての祈りである。

全身で笑う…心の底から笑う…
 蝶花楼馬楽師匠を迎えての「清興の会」が開かれた。国立演芸場出演の合い間をぬっての来浜である。     
 方丈はじめ和尚さま方の退堂を待って出囃子が流れ始める。
 『天林寄席』のハジマリである。おなじみの『お化け長屋』をじっくりと語られた。一呼吸入れた後、二席目は『浮世床』…とテレビやラジオでは聴けない長い話に居並ぶ聴き手は大満足。体をよじり遠慮なく大声で笑いこげた。師匠は心得たもので、「素人ですが…」などと言いながら粋に『奴さん』を踊り、打ち出しとされた。まさに、東京の寄席のミニ興行である。        
 帰り際の「来年が楽しみ…ネ」は分かるが「渋い芸って、後からでも笑えるねぇ」の感想は、聴いた人しか理解できない評価であり、感想であった。