平成30年2月11日(日)
寒波、なにものぞ!「稲荷楽市」
 近年にない寒波の襲来で日本列島は震えあがっている。ことに北陸、東北、北海道は降雪との闘いであり、道路の凍結による交通マヒは長時間に及び、食料品の補給にも支障を来たし始めたと伝わる。各地の皆さんには心よりお見舞い申し上げます。
 比べものにはならないが、当地も不安定な天候が続き、寒さは堪えるものの「せめて晴れてほしい…」と祈るしかない。幸い雨にはならなかったが、冷え込みは厳しい。しかし、例年通り開店準備の声が朝早くから響き、境内だけは熱意あふれる世界だった。
 
 今年から、参加店さんの駐車場を近くに借りた。徒歩で7~8分の距離であるが、いったん車を置いて開店となる。例年とは勝手が違う流れが心配の種だ。幸い駐車場への道順も事前配布の地図で告知でき、迷う人はいなかった。中には長躯、静岡市から参加の店もあり、従来は女性の店番だったが、今年は頼もしそうな男性二人、余裕ある開店であった。

各所それぞれに備えて、待つ
 天真閣の『お茶席』も準備が進んでいるようだ。若きはかま姿の茶人?の出入りも見られ、伝統ある茶道の雰囲気を漂わせてきた。案内の張り紙と一席500円のビラが寒気の中に目立つ。
 好評の甘酒接待は、未だ準備整わず!の体である。テーブルは出ているものの手づくりの幟は揚がって居らず、横になったままだ。
 
 天候に左右されない本堂内での『福引』準備のテンポは速い。慣れた手つきで景品の山を築き、大賞に鳴らす鐘の位置も定まったようだ。お寺には種々のカネ(鉦や鐘)が存在するが、昔日の運動会、アイスキャンディ売りの手振れ?のカネ(ハンドベル)の音は堂内に納まらず、境内に流れ出て力強い景気づけになる。さて今年の「福」はどなたの手に…渡るだろうか。

方丈ご挨拶
 9時30分、にこやかな笑みを浮かべながら方丈が本堂の前に登場。ユーモアを交えながら「お稲荷さんのご利益を頂いて…」と、売り手買い手が愉しい1日になるよう希望を述べて挨拶を締める。それを機に、あちこちで勢いのある掛け声が飛び交い、いよいよ開店!となり、さらに人の動きが活発になる。
 10時少し前、ハーモニカ独奏・岩崎武夫、和久田修さんの音だしがあり、いよいよ境内は華やぐ。楽市を彩るボランティアの皆さんの活躍は稲荷楽市の名物。毎年、新ネタを披露される大道芸の田中道夫さん、バルーンアートの岡野久夫さん、大人にも子供にもウケルバンド『春がいっぱい』…それぞれ寒さに負けぬ活躍ぶりである。

ご祈祷の唱和、稲荷堂に注目!
 BGMを背に売り買いの声が響く中に1回、2回と鉦の音が通りぬける。15時をもって正装の方丈が出座、稲荷堂に向う。お付きの僧侶らも縦に続く。気配に気づき周りの人は手を止め、見やる。挨拶時のやさしい方丈と異なり立帽子を着用、近寄りがたい。本堂前はにわかに静まり、列の行く手は自然に開かれる。人々の視線も集中、後に続いて鳥居をくぐる人も多い。本日の大団円、稲荷堂でのご祈祷が始まる。
 一方、本堂前では集まり始めた人々が階段を取り巻いてそれぞれの位置を占めている。そして手には大小のポリ袋。祈祷が終れば恒例の投げ餅が始まる。
 「寒さのせいかなぁ」と例年より人手が少ない観測があちこちでつぶやかれる。しかし、「…すると一人当たりの収穫は…」などの声は出ず、互いにうなずき合うだけだ。「その分、頑張るぞ…」と目が輝き合うように見えたのは、当方の錯覚であろうか。
…こうして今年も無事、お開きの時を迎えたのである。