平成30年3月18日(日)
春の彼岸法要
油断せず、「春」を待ちつつ
 日々、異常気象…と喧伝され寒暖の差がはなはだしく荒れた日も多い昨今、「暦の上では…」などのマスコミの常套句は聞かれない。昼夜や日によって10度ほどの気温差も珍しくなく、予断も許さず冬物の納め時期に困ってしまう。気象予報士も忙しく、TVの登場頻度は政治評論家の右に並ぶ。
 しかし、気の毒に思えるのは、町の木々たち。ハクモクレン、櫻などはいつ開花していいのやら、さぞや迷っているだろう。近くのモクレンなどは一気に開花したものの翌日には寒風と冷雨にたたられ、次の日には早くも花弁が落下、明けて3日目には枯れて茶色と化し路上に散らばり哀れさを誘った。美しいとはいえ、蝉の命にも叶わぬ儚さに、つくづく自然界の厳しさを見せ付けられた。
 
いつもと違う香のかおり
 本堂右手の間に何やら展示品がならんだ長机が二つ。位牌堂の往復に、チラッと見る人、近づいて手にする人、柱に貼られたポスターと見比べる人。それぞれにゆったりと反応していく。
ポスターは『仏教に親しむ会』…5/27(日)…の案内。しかし、いつもと違い机の周囲には良い香りが漂っている。近づき、手にとった人は即座に納得、法要後の講話…「お線香と『香』の変遷」のお膳立てであった。
 法要が近づいている知らせか、ご詠歌が詠い始まる。位牌堂や墓参帰りの人がそれぞれ椅子を手に位置を決め、三々五々着席していく。詠歌が続いている中、静かにゆるゆると和尚さま方が須弥壇前に並列される…。
 時を選んだかのように殿鐘(でんしょう=本堂の釣鐘)が鳴らされる。止む私話、急ぐ身づくろい。
 堂内が静寂に包まれ、遠くの鉦がかすかに伝わってくる。次第に確かに聞え、その残響のまにまに衣擦れと畳を噛む音が耳に届く。次に目には鮮やかな緋色…緋の衣をまとった方丈の登場である。
 方丈以下、順にしたがい、上香、三拝、献湯菓茶、読経と進む。
 
回された香炉に思いをこめ、念じる
 「彼岸法要に移ります」の声に一同はふたたび三拝、経題が告げられ修証義を唱える。
 読経の中、回し香炉が堂内の参会者ひとり一人に渡り、ご先祖様への謝恩や家内の安全、無事を願い黙祷、彼岸会法要は終了した。

香りは心を癒し、豊かさを運ぶ
 春の彼岸恒例の「講話」が始まった。急いで着替えられた方丈が講師の広瀬和也氏を紹介する。鞄本香道の要職にあり、名古屋支店から駆けつけてくれた。
 用意されたレジメには宣伝色を押さえ香の歴史とお線香が分かり易く述べられている。
氏は、資料に従い日本書紀に見えるという「沈香」の流れ着いた話から仏教と共に広まった経緯を時代区分に従って丁寧に話された。
 身近な線香の生まれた背景、普及などにも触れ、「香りをご覧になりますか?」と原料の数々を紹介、参加者もそれぞれに瓶の口を開け閉めしたり、手をかざして扇いだりし、確かめ合った。
 質疑も活発に成され、「昔は優雅だったんだぁ」などの感想も飛び出し、講話はお開きとなった。