平成30年9月20日(木)
秋の彼岸法要・清興の会
秋の彼岸会
心に染み入る読経の声
 ――堪能した落語二題と寄席おどり――

    
 地震の被害を受けられた地方の皆さまには心よりお見舞い申しあげます。
 遠方の私たちも、ご親戚知人の被害ないことを互いに確かめ合う会話も一段落。列島を縦断した台風も幸い当地では被害も少なく、郷土の安らかなる幸福に感謝したい。  
 とは申せ、9月に入っても暑さの続く日々に「今年はなんと…」と例年にない不順な天候を憂いつつ「秋は来るのかしら…」と半ばアキらめムード。10日も過ぎてやっと「真夏日」も減り、時々過ごし易さを味わえる日も増えてきた。
 それでも彼岸の入りの日、相変わらず本堂にはあちこちに扇風機が置かれ風の流れが頼りにされた。
  
墓地から位牌堂、念じて…座る本堂
 本堂右手にはすでに緋毛せんを敷いた『高座』がしつられている。
…高座の言葉を使うのは今年2回目。7月のお盆に法話を頂いた井上貫道老師がお座りになったのが元来の高座である。「寺院でお説教される僧の一段高い座」の意味から、講釈師の席を指すようになり、ならって寄席で芸人が演芸を披露する舞台を高座と言うようになった、と伝わっている。世に言う仏教用語から一般化した言葉のひとつである…。
 
それはさて置き、本堂ではご詠歌が流れる中、殿鐘(でんしょう・本堂西隅の大鐘)が鳴らされ、全山に法要の定刻が告げられる。詣でた檀信徒は墓地から足早やに、位牌堂からも…と本堂に集り、それぞれに座りはじめる。一方、近在の和尚さま方も入堂され須弥壇前に並列、導師を待つ。
 七下鐘(導師の登場を告げる鐘)が鳴らされ、帽子(もうす)をかぶり鮮やかな緋の衣をまとい白い払子を手にした方丈が入堂、はじめに焼香される。  
 続いて導師の所作にあわせて和尚さま方が礼拝を三遍繰り返す。参列者も倣って三拝する。導師は香を焚き、いつものように、心をこめて献湯菓茶をなし、終える。此処での三拝とは、ご本尊、釈迦牟尼仏、両祖大師(道元禅師、瑩山禅師)、ご開山さま(傑堂義俊禅師)、歴代ご住職、そして檀信徒諸霊への三拝九拝のことである。
 時を移さず維那和尚様が経題を告げられ、般若心経が唱和される。
 終ると、ふたたびご詠歌が唱われ、「彼岸法要に移ります」の案内があり、修証義が唱えられる。
 読経が流れる中、香炉が廻され一人ひとりがその場で焼香する。誰もが祖先を偲び、今日ある自らを省み感謝し、親族の平穏無事を願う。お経はさらに続く。

口を覆うのも忘れて…笑う…笑う
 方丈はじめ和尚さま方の退堂を待って陽気に出囃子が流れ始める。一気に堂内の雰囲気が変わり、何か気が浮き立つようだ。『天林寄席』の開幕である。
 おなじみの蝶花楼馬楽師匠が登壇、しわいお話『みそ蔵』とおなじみ『小言幸兵衛』の二題をじっくり聴かせた。大笑いの余韻が残る中、お得意の寄席踊りでさらっと座をなごませ、打ち出しを迎えた。日頃、TVなどで軽薄な芸人さんはおなじみだが、渋くて粋な噺家(はなしか)さんの落語をじっくりと間近で聞ける機会は得がたい。ぜひ皆さんに楽しんでもらいたく、来年のご来場を強くお誘い申し上げます。